「っくう……はぁっ……」

ＢＢＡ本部にある、人気の無いトイレの個室。

「あぅっ……うぅん……」

淫らに喘ぐレイの声だけが、狭い空間に響きわたる。

先程までＢＢＡ本部で特訓をしていたため、既に夜も更けており、職員は殆ど帰宅している。本部内でも不便な所にある男子トイレは、レイの欲望を鎮めるための格好の場所だった。

「あぁっ……カイっ……」

洋式の便器に腰を降ろし、自らの怒張を激しく擦りながら、求める人の名を叫ぶ。

今日のエモノは、こっそり盗み出した、カイの下着。

特訓のため汗で汚れた衣類は、ＢＢＡ本部がクリーニングを行うため、所定の籠に納める決まりになっていた。

シャワールーム内の脱衣場で、カイが下着ごと衣類をクリーニング籠に入れるのを見たレイは、居ても立ってもいられなくなり、カイがシャワールーム内に消えたのを見計らい、中からカイの下着だけを持ち脱衣場を飛び出していた。

後ろから跡を付けられているとも気付かずに。

「もっと……欲しいっ……カイっ……」

右手で自身を扱きながら、左手でカイの下着を口に銜える。

汗のすえた匂いが鼻腔を塞ぎ、湿った体液が口内に纏わり、カイ自身を口の中に迎え入れているような錯覚に陥る。そのことがレイを更なる興奮へと刺激した。

「んぐぅっ……」

口の中へ全てを放り込むと、まるで口淫を強要されているような圧迫感に、レイ自身を慰る手の動きが速くなる。

「んっ！んんっ！！」

やがて怒張したレイの肉棒から、勢いよく白濁液が迸った。欲望は幾度となくドアを打ち付け、滴となって壁を伝い落ちてゆく。

「はぁ……はぁ……」

荒く息をつきながら、レイは口の中から唾液にまみれた下着を取り出し、ポケットの中にしまい込んだ。名残惜しいが、返さなかったとすれば紛失騒ぎになり怪しまれてしまう。

トイレットペーパーで精液を拭い、水に流す。

身支度を調えると、何も無かったようにドアを開けた。

「…レイ」

「……タ、タカオ！？」

ドアの外では、タカオが仁王立ちになって立ち尽くしていた。

「どうやってもレイはおれの方を向いてくれないんだな……」

「……タカオ…………すまない……」

縋るような眼で見つめてくるタカオを直視できず、目を逸らすレイ。

「……オレにはカイが…っ！」

「…なら、おれから離れられなくようにしてやる！」

叫びながら、タカオはレイに体当たりを仕掛け、個室内へと押し戻した。

後ろ手でドアに鍵をかけると、レイの胸倉を掴み顔を引き寄せ、唇を奪った。

「んんっ！？」

強引なキスに顔を逸らして逃げようとするが、頸もとをしっかりと握られ身動きが取れない。

レイの口腔を丹念に味わった後、ようやく解放される。

「おら、ケツ出せよ！」

「…なっ、何をっ！？タカオっ！」

タカオはレイを後ろ向きにさせると、強引に下着ごとズボンを引き下ろした。

柔尻が外気に晒され、何をしようとしているのかが窺い知れた。

「やっ、やだっ！やめてくれタカオっ！」

「うるせぇ！」

タカオはレイのポケットに手を入れると、さっきまで使用していたカイの下着を手に取り、レイに見せる。

「いいのか？カイの下着を盗んでオナニーしてた変態だってバラすぞ！？」

「くっ……」

カイにだけは知られたくない。

軽蔑されたくない。

失いたくない。

カイの名前を聞かされ、レイの身体から抵抗する力が抜け落ちた。

「ははっ！素直だなレイは」

タカオはレイの背中を押し、四つ這いにさせた。上体を前屈みにし、腰を掴む。

腰をグッと後ろに引かれ、レイはバランスを崩しそうになった。慌てて両手で便器の縁をしっかりと掴む。

「ほら、挿れてやるから、イレテクダサイ、ってお願いしてみろよ」

タカオはそう囁きながら、勃起した自らの肉棒をレイの尻丘に擦りつけた。先走りの液を塗りつけ、挿入への前処理を行う。

同時に片手でレイの性器を弄ぶ。先程の余熱が、レイを駆り立てる。

欲求と躊躇いが交互に入り交じりつつも、徐々に官能の波が高まってくる。

「い、入れて……ください……」

レイが言葉を紡ぐや否や、タカオの亀頭が菊口に押し当たり、体重を乗せてきた。

「タカオ、やめっ…痛っ、痛いっ！」

レイは咄嗟に両腕を突っ張らせた。全くと言っていいほど慣らされてないそこは、タカオ自身が突き進んでゆく度に痛みを伴う擦れが起きたが、立ったまま背後から突き入れられる挿入感が先立ち、身体に杭を打ち込まれた感じがした。

「ほら、もっとヨガってみろよ。さっきみたく気分出してさ」

レイのなよやかな腰を掴むタカオの手に、力がグッと込められる。まだ半分も入れないうちから、力強く腰を律動させ始めた。

「そっ、そんな、ことっ…あっ、あっ、あううっ………」

細身の身体を前後に揺さぶられ、レイは恨めしい声を漏らした。

体内を掻き回す肉棒を想像するだけで、全身の感度が否応なしに鋭くなり、肉塊の摩擦感が倍増する。タカオと繋がっている局部以外、しっかり服を身につけていることも、より強い興奮を引き起こした。

「うぅっ、あっ、はっ……うっ、うううっ……」

レイは我慢できずに自分からも腰を動かしていった。タカオの直線的な動きに対して、なめらかな臀部を大きく回すようにした。首をガックリ折ると、甘い香りの黒髪が、パサリと顔を覆い隠す。

「ううっ……そこっ……いいっ……」

亀頭が、腸壁をえぐるように擦りつけられる。

「くっ……あ…ッ、レ、レイっ…」

タカオのピッチが俄然早まり、レイは腰と上半身を強く揺さぶられた。

呼応するかのようにレイ自身を弄んでいた動きが早くなり、ヌチョヌチョとした涎の練る音が大きくなる。

前後を同時に刺激され、めくるめく絶頂の中で、レイは臀部にキュっと力が入ってしまう。挿入された肉塊に腸圧がかかってゆき、まるでタカオの陰茎から精を絞り出すようだった。

「も、もう、出るッ…レイっ！」

「あ、駄目、あぁぁっ！」

タカオがレイの体内に灼けつくような熱い迸りを浴びせるのと同時に、レイが頭を大きく背後に逸らし、自身の肉棒からも白濁とした液体が噴き出した。

黒髪が揺れ、その切れ目から、赤く上気して汗に濡れたレイの絶頂の喘ぎ声が覗いた。薄闇の中、色濃く花弁が花開いたように、凄艶に満ちた顔だった。

「はぁっ、はぁっ…………ぁぁっ！？」

肩で息をつくレイを尻目に、ぶるっとタカオが身体を揺らすと、先程とは違う熱い迸りが、レイの総身を電流のように駆け抜けてゆく。

タカオはレイの体内へ放尿を始めた。

「うわぁぁっ、くぅぅっっ…」

腸壁を打ち付ける激しい水勢に、レイからくぐもった声が漏れる。体内が液体で満たされてゆく感覚に、身体中が熱くなる。

身体を揺すられ、体内に射入された液体が、レイの腸内を生き物のように撹拌しながら駆け廻った。動きにつれて、排泄の感覚が不気味な足音を立てて迫ってくる。

「ふぅっ…」

タカオは全てを放出し終えると、レイの体内から自身を引き抜いた。

肉棒の先端は、処理をしていなかったため、レイの「おまけ」が付き、黄土色に滑っていた。

「けっ！ちゃんと処理して来いよっ！」

排泄の欲求に必死で耐えるレイを平手で打ちつけたあと、タカオはカイの下着で自身の竿を拭った。

「くはぁ！」

レイの蕾が一瞬緩み、キュッと窄む。

タカオはレイの肛門を覗き込むと、黄金色の液体が僅かに漏れだし、内からふくらむような動きを見せつつ痙攣していた。便意が出口を求めて間もなく爆発することを示す動きだ。

「その年でお漏らしして恥ずかしくねぇのかよ！？」

タカオはカイの下着を手にすると、レイの秘所に近づけ、漏れだした液体を拭う。

「だらしないケツの穴に栓してやるよ。ありがたく思えよな」

言いながら、レイの蕾からカイの下着を捻り込み、徐々に体内へ埋め込んでいった。

「はぁッ……や……やめ……」

湿り気を帯びた布地が内壁を擦り、体内へと押し込まれてゆく。

それがカイのものであるというだけで、レイの肉茎が再び熱を持ち始めていった。

「あッ……カイっ……」

熱にうかされ、譫言のように名前を発するレイ。

それが自分の名前では無いことが、タカオの心を激しく突き動かした。

「そんなにカイがいいんなら、入れてやるよッ！」

タカオは薄布を指でレイの体内へと押し込むと、また周辺から布地をかき集めて、再び中へと押し込んでゆく。

「いやだッ……とっ……取れなく……なる……ッ！」

異質な圧迫感がレイの身体を蝕む。括約筋に力を込めて必死に抵抗を試みるが、動きを止めるまでには至らない。それどころか、力を込めることで、性感帯が刺激され、全身に快感が走る。

「これで最後だな。お前の大好きなカイのなんだから、たっぷり味わってろよ」

「やだぁッ……やめてくれ……タカオ……」

レイの瞳から滴がこぼれ落ちるのと同時に、タカオが指に力を込め、最後の切れ端をレイの身体に押し込んだ。そのまま何本かの指で奥まで貫き、レイの体内深くへと完全に埋め込んでしまう。

「はぁっ……とっ……取れない……」

レイは指で秘所をまさぐるが、場所が場所だけに指は触れるものの取り出すまでには至らない。

「へへっ。じゃぁまたな、レイ。下着はちゃんと返しておけよっ！」

「やだっ……取って……タカオ……お願いだっ……」

押し寄せる排泄感と押し留める圧迫感に苛まれながら、レイは埋め込まれた異物を掻き出すべく、必死に自身の秘所を弄り続けるのであった。


（終）