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恋のエプロン
たまにはこんなのも……
「カイが一人暮らしだって聞いたから、夕飯作ってやろうと思って」
そう言いながら、ベランダから部屋に入り込んで来るアイツの姿を見て、言葉に詰まった。
「外から見たら部屋の窓が開いてたからさ、そこから入った方が早いと思ったんだ」
ああ、確かにベランダへの窓を開けていたのは事実だ。しかし、ここはマンションの7階だ。こんな所から買い物袋をぶら下げた来訪者が現れるなどと普通考えるか?
しかも、現れたのが、俺の想い人であるなどと……。
「じゃぁ、台所借りるなっ!」
軽く瞑想に耽っている間に、レイは料理を始めていたらしい。
台所からトントンと小気味よい音が聞こえてきた。
まるで押しかけ女房のようだ。
……そう考えただけで、つい顔が緩んでしまうのは何故だろうか。
「包丁が1本しか無いっていうのはカイらしいよなー」
レイは調理用具が少ないことが不満のようだ。男の一人暮らしで包丁があることの方が珍しいとは思うのだが。
そういえばどこかにしまい込んだままの調理器具があった筈だな、とクローゼットの中を探そうとした時、
「いてっ!」
台所からレイの声が聞こえた。
慌てて台所へ駆けつけると、驚いたような目でレイがこちらを見つめてきた。
「ちょっと、手ぇ、切っちゃっただけだから、気にするな」
レイに詰め寄り、指を強引に奪い取ると、僅かに切れた皮膚から血が滲みはじめていた。
…無意識のうちに、レイの指を口に含んでいた。
傷口に付いた血を舐め取るように、唾液で傷を消毒するように何度となく舌を転がす。
「なっ、なっ、カイ!?」
レイが慌てて指を抜き去った。
顔を真っ赤にして狼狽えるレイに、消毒だ、とだけ言い残して台所を後にした。
暫くした後、
「あちちっ!」
再びレイの声が聞こえた。
慌てて台所に駆けつけ、側に寄ると、レイがくるりと向きを変えた。
「スープを作ってて、味見したらヤケドした」
笑いながら、ペロッと舌を出すレイ。
赤く、ほんのりピンクに染まった舌を見て、俺は……
今夜は、長い夜になりそうだ。
まぁぶっちゃけ言うとHなの書いている方がラクですな。
こっちは気恥ずかしくて(汗)
こっちは気恥ずかしくて(汗)