title :   社長のカガミ?
初キリリクです。ありがとうございました!







火渡コーポレーション。

日本においてその名を知らぬものは居ないと言われるほどの、押しも押されぬ大企業グループである。

その要とも言うべき本社ビルは、その知名度に比例するかのように、街中を一望できるほど高くそびえ立っていた。

そんな場所へ、ビジネス街としてみればおよそ不釣り合いな人物-白いチャイナ服を身に纏い、長い髪を後ろで束ねた少年-は、茶色の書類袋を大事そうに胸に抱え、人混みの中を一目散に歩みを進めていた。

「初めて来るけど、話に聞いていたよりスゴイよなぁ…」

ビルを見上げていた少年の口から、ほへぇ、と感嘆とも驚きともとれる変な声が漏れた。











事の起こりは、朝も早くから金レイの家に掛かって来た、一本の電話。

ジリリリリーン、と鳴り響くベルの音は、食事と同じくらい睡眠を重要視するレイにとって邪魔者以外の何物でもない。

(…誰だ…こんな朝早く……)

微睡みから無理矢理起こされてしまった身体はすぐに反応できず、どうせ相手は根負けしてすぐ切れる、そうすればまた心地よい世界に戻れる……安易にそう考えていた。

しかし今日の電話の主は余程切羽詰まっているのか、はたまた只の暇人なのか。ベルの音が10回、20回になっても切れる気配が無い。

(…まだ切れないのか……?)

俯せのまま上掛けを頭からすっぽりと被り、両手で耳を塞いでみる。

しかし規則的に発せられる高域音が、否応無く意識を覚醒させてゆく。

(…ああ、もうっ!!)

温もりの中で50回目のベルの音を数えた頃、とうとう耐え切れなくなり、ベッドの脇にある受話器を手にした。

「…………………もしもし」

元来朝に弱く、また昨日は寝るのが遅かったため、睡眠時間が十分に確保できておらず、思いっきり不機嫌な声を出してしまう。

「……ようやく起きたか」

電話の主は、最近会社を継いだばかりの、火渡カイ。

昨日の夜、レイを睡眠不足にした張本人でもある。

「…………切るぞ?」

「その前に話を聞いてくれ」

珍しく切羽詰まった声のカイに、レイの声も真剣味を帯びる。

「どうかしたのか?」

「実は、重要な書類を忘れてきてしまってな、回収を頼みたいのだが」

「カイが忘れ物だなんて、珍しいこともあるもんだなぁ…」

「今朝はお前の家から直接出勤したからな、朝寄って回収する時間が無かった」

「え、昨日は帰らなかったのか?」

そう、昨日は久しぶりに仕事が無いからと、二人だけで遊びに出掛けて、帰りにレイのアパートに寄って行って……。

それからの記憶を辿ると顔が赤くなってしまうが、レイの首元には赤く腫れたような情交の跡がくっきりと残されていた。

「仕方ないだろう」

なにかしてしまったのだろうかと、受話器を持つレイの手に力が籠もる。

「昨日の夜、誰かさんが『もっと…』と何度もせがんで来たものだからな。つい…」

言葉を聞き終えるまでもなく、レイは受話器を元の位置に叩きつけた。

ガチャン、という衝撃音があたりに鳴り響くが、すぐにまた呼び出しのコール音がかき消した。

よっぽどこのまま放っておこうかと思ったが、それはそれで寝覚めが悪いような気がして、レイは20回ほど待って焦らしてから、無言で受話器を取り上げた。

「気分を害したのなら謝る」

真っ先に聞こえて来たのは、カイの謝罪の声。

「なら最初から言うな!」

「経緯を説明したまでだが……事実だから致し方あるまい」

「本当に切るぞッ!?」

「切るなら話を聞いてからにしてくれ。玄関を入ってすぐのテーブルの上に、茶色の封筒が置いてある筈だ。どうしても今日の昼までに必要な書類なので、なるべく急いで持ってきて欲しいのだが……」

ちらと壁に掛かった時計に目をやると、もう少しで10時になろうとしていた。確かに今からカイの家に向かえば、時間的には間に合う計算ではある。

「自分で取りに行けばいいんじゃないか?」

「それが、これから午前中はずっと会議があって、どうしても抜け出せない」

暫しの沈黙。

「……それに部屋の合鍵を持っているのはお前だけだ。頼む」

自分だけ、という事実に胸が高鳴る。たったそれだけの事で請け負ってしまいたくなるのは安売りだろうか。

レイは少し考えてから言葉を放った。

「…この間見た、ホテルのランチ。あれがいいな」

「交渉成立だな。受付には連絡しておくから、宜しく頼む」

会議に呼ばれたのか、最後の方は慌てて電話を切る音が聞こえ、レイも受話器を置いた。

身体を起こし、ベッドから降りようとして、昨夜の名残が秘所から漏れ、太腿を伝い流れ落ちてゆく。

「あ………」

どうせなら奇麗に洗い流してから出掛けたかったが、最早シャワーを浴びているような時間的余裕は無い。

ティッシュペーパーを数枚取り出し適当に拭うと、大急ぎで着替え始めた。











目的のビルに入り、受付で名前を言うと、すぐに何度か見覚えのある秘書の人が受付まで迎えにやって来た。

軽く会釈をしてから書類を渡そうとするが、直接社長に渡してくれと強い口調で押し止められたため、促されるまま最奥のエレベータに入ると籠はあっという間に上昇し、最上階で動きを止めた。

「うわ……」

最初に視界へ飛び込んできたものは、廊下を覆い尽くす真っ赤な絨毯であった。見るからにフカフカとしていて、一歩足を踏み入れただけで強い弾力に押し返され、これは高価な物なんだと激しく自己主張しているようである。

また廊下の両側には見るからに高そうな絵画や彫刻の類いがいくつも配置されており、これでもかと威圧をかけてくる。

「悪趣味……」

レイの呟きが聞こえたのか、前を歩いている秘書の男が口を開いた。

「社長室へお通しするような御客様に、見窄らしいものをお見せする訳にはいきませんから。もっとも、社長は『悪趣味だ』と嫌がっておいでですが」

そう言いながら突き当たりのドアをIDカードで開き、中へと入ってゆく。招かれてレイも中に入ると、そこは1フロアをほぼ丸々使った広いオフィスで、男女含めた数人のスタッフが忙しそうに働いていた。

来訪者に気付いたのか、各々が姿勢を正して深々と一礼してくる。連られてレイもお辞儀を返すと、束ねた尻尾がぺこんと揺れた。

「ここは秘書室で、社長室はこの奥になります。社長はまだ会議中でして、申し訳ありませんが中でお待ち頂くようにとの事です」

秘書室全体を見通せるような奥まった場所の、一面を白い磨りガラスで隔てられた空間が社長室であると教えられ、レイはドアを開けて中へ入った。

人生の中で最も縁遠いと思われた場所は、廊下で感じた悪趣味さに負けず劣らず、内装といい調度品といい、贅沢で豪華な造りをしていた。どこかの王室を思わせるようなソファーに大理石でできたテーブル、年代を思わせるがどことなく威厳を感じさせる社長の机と本革の椅子。社長の席の背後は全面がガラス張りでできていて、そこからの眺めはある種の征服欲のようなものを刺激してくるようだった。

(ひょっとして……前の社長…カイの父親が使っていたものを今もそのまま使っているだけなのか?)

なんとなくそう考えると全てに納得がいく。

暖かな陽の光が差し込む社長のイスに腰掛けながら、見晴らしの良い窓から町並みの様子を見つつぼんやり考えていると、そのうち瞼がゆっくりと下がってくる。

寝てはいけないと思いながらも、座り心地の良い椅子に加えてほんのりと漂うカイの匂いに包まれているような気がして、抗う気力も次第に失われてゆく。

寝不足に加え早起きを強要されたということもあり、意識は混濁とした泥の中へ落ちてゆくように、眠りの世界へと誘われていった。











それから暫くして。

"来客有り"のメモを渡され、急いで会議を終わらせたカイだったが、社長室の中を見渡してもレイの姿はどこにも見当たらなかった。

(まさかもう帰ってしまったのか?)

焦る心を抑えながら耳を澄ますと、部屋のどこからか規則正しい寝息が聴こえてくる。

「くー……」

お目当ての人物は、窓の外を向いた椅子に身体を預け、未だ夢の中であった。

「何処でも寝る奴だな……」

カイはレイの胸に抱えた書類袋をそっと抜き取ると、中を確認してから胸ポケットのペンを取り出しサインを走らせた。一度部屋を出て、外で待機していた秘書に手渡し、再び部屋の中へと戻る。

レイの側に近寄り「起きろ」と声をかけてみるが、その度に多少身じろぎするだけで一向に起きる気配は無い。

「起きないというつもりなら、好きにするぞ」

そう呟きながらレイの胸元に右手を差し込み、左手で器用に腰帯を解いた。

緩んだ帯はかろうじて腰の辺りに留まっていたが、胸元は大きくはだけられ、桃色の乳首が外気に触れる。

指先で突起を弄りながら、首筋に残るキスマークの上から強く吸い付く。刻印を濃く染みつけるようにきつく吸い上げると、レイの身体が軽く震えた。

「…ん……」

敏感な胸先に舌を這わせ、舐め上げながら吸い付くと、レイの口から喘ぎが漏れてくる。

もう片方の乳首を爪で軽く弾きながら、指に挟んで摘みながら捏ねられると、堪えきれない身体の疼きがレイの意識を揺り起こした。

「…な……なにしてるんだ?」

「……見ての通りだが」

「そういう事じゃなくて!ここドコだと思ってるんだ!?」

カイはあたりをぐるりと見渡した。

「会社だ」

「そうじゃなくて!こんな所で…ングゥッ!」

抗議の声は押し当てられた唇に塞がれ、行き場を喪う。

ねっとりとした舌が絡み合うたびに、ピチャピチャと淫猥な音が響いた。

「そんな無防備な格好をして寝ているんだ。襲ってくださいと言っているようなものだろう」

「だからって!いやそんな事ないけど!」

「そうか?それにしては十分その気なようだが」

布地越しに陰部を弄られ、レイが甘い吐息を漏らす。

寝ている間に受けていた愛撫の所為か、レイの分身は既に熱く漲り始めていた。

「だからッ…駄目だって……」

「構わん」

カイは中断していた胸への愛撫を続けながら、右手をレイの股間に当て、掌で撫で摩りながら布越しに軽く爪で弾いた。

「んッ!」

衝撃を受ける度にレイが嬌声をあげ、その度に股間がピンと張り詰めてゆく。

そのとき、静寂を打ち破るように、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「…誰だ、気の利かない奴め」

などと毒づいてはみたものの、真っ昼間から情事に耽っていたということが明るみに出てしまうのは、カイとしても御免である。

「少し我慢してくれ」

「……え!?」

カイはそう言いながらレイの身体を抱き起こすと、足元の机の下にレイを匿った。コの字型になっているため、入り口側からは誰かが隠れていたとしても簡単にはわからない。

声を出すなよと念を押し、慌てて椅子に座りながらネクタイに手をかけ、それとなく位置を整えた。

「…入れ」

「失礼します」

一礼して入って来たのは、先程レイを案内した秘書の男だった。

机の前に立ち、手にした書類に目を通しながら、淡々と事務内容を読み上げる。

「午後のスケジュールについてのご説明にあがりました」

「午後は打ち合わせが2件あるだけだったと思うが?」

「はい。その通りです。まず14時から予定されていた欧州部門の営業報告会についてですが…」

机上では、さっきまで乳繰り合っていた様子など微塵も見せず、カイは社長としての仕事に切り替えていた。

面白くないのは机の下に押しやられたレイの方である。届け物を頼んでおきながら、ちょっと眠った隙に勝手に弄ばれ。それでも昇り詰めようとしたら、手を止められて狭い空間に押し込められ。

行きどころのない熱がレイの身体中を漂っていた。

ふと目をやると、椅子に腰掛けるカイの下半身がレイの眼前に入った。

(……声を出さなければいいんだよな)

レイはもぞもぞと体勢を入れ替え、カイと向き合う姿勢になると、両手をカイの股間へ這わせていった。

ズボンのファスナーを下げ手を差し込み、指先で下着の膨らみを撫で廻すと、カイの下半身がビクッと震えた。

「…!」

下着の割れ目をこじ開けて漲るカイの肉棒を取り出すと、ツンと鼻を突く匂いがした。

(カイの匂い……)

先端に透明な滴が滲みはじめているカイの肉棒を、レイは両手で軽く抑えつけるように握りしめ、ゆっくりと上下に刺激し始めた。

「…ッ!」

「どうかされましたか?社長」

「……いや、何でも……続けてくれ」

気付かれてはいない。とはいえ人前で他人に触られる感覚が、カイの五体を鋭く痺れさせる。

(……なかなか、しぶといなぁ……)

レイはゆっくりとカイ自身に近寄ると、口を大きく開け、灼熱の塊を喉の奥深くへと沈めていった。先走りの液を舌で舐め取ると、塩辛さとほろ苦さで口内が満たされてゆく。

「………っ…」

柔らかな口肉の感触に呻きを漏らさぬよう、カイは口元を隠しながら、表情を悟られまいと俯いたまま書類を見る振りをし続けた。

だが、亀頭のあらゆる方位から包まれ、擦るような刺激を与え続けられては、いかにカイといえども平静ではいられない。

「………現地が天候不良のため飛行機が欠航との連絡が………社長?どうかなさいましたか?お顔が赤いようですが」

「……すまない……今日の予定は全てキャンセルだ」

「大丈夫ですか?お風邪であれば医者の手配を…」

「いや……少し休んでいれば……いいッ!」

「しかし…」

「……大丈夫だ…下がってくれ…」

「……では、何かありましたら、すぐにお呼び下さい」

一礼し、来たときのようにドアを開けて出て行く姿を見届けてから、椅子を後ろにずらし、首根っこを掴んでレイを立たせた。

「お前な……」

「…だって、カイが悪いんだからなっ」

上目遣いで見つめてくるレイの口元は、溢れた唾液で濡れぼそり、妖しい光を湛えている。

艶めかしい唇と併せ、カイの加虐的な性意識を微妙に擽ることに、レイは気づく余地も無かった。

「そんなにヤりたかったのか?」

「…そういう訳じゃないけど」

なんとなく仲間外れにされたような気がして。

カイは椅子に腰掛けたまま、レイのズボンを下着ごと引きずり降ろした。

秘所を指で撫でさすると、既にそこはねっとりとした液体で濡れそぼっていた。

「その割にはもう準備ができているな」

「そ、それはッ、朝時間が無かったから…」

歯を喰い縛ってカイの指に反応しないよう抵抗すればする程、カイは指の動きを激しくして責め立てる。レイの蕾は漏れ出た液ですっかり濡れ光り、指を差し込むたびにグチョグチョと淫らな音を立てて反応した。

「いつも言っている通りシャワーは浴びなかったみたいだな……イイ子だ」

「カイの…へ、変態ッ」

「お前だってこういうのが好きなんだろう?」

クククッと低い声で笑いながら、指の数を増やしてレイの秘所を弄び続ける。

「あぁッ……はぅぅ……」

レイの秘所は伸縮性と粘着性の豊かさを物語るように、カイの二本の指を呑み込んで妖しく拡がり、それでいて指の根元をヒクヒクと締めてゆく。

カイはレイの身体を後ろ向きにさせ、椅子の上に腰を徐々に下ろさせた。

「ほら、いいぞ」

カイの怒張に手を這わせて、菊口に当たるよう狙いを定めながら、カイの身体に重なるよう、レイの身体がゆっくりと降りていった。

慣らされたレイの身体は痛みを感じることもなく、すんなりとカイの怒張を受け容れてゆく。

「んはぁっ!」

求めていた感触で突き上げられる度に、レイの口から絶叫にも近い喘ぎが溢れた。

「あまり大きな声を出すな」

「そん……な事……言った……って……えっ…」

やんわりと制止されるが、同時に下からえぐるように突かれる衝撃で、レイは部屋中に響き渡るような喘ぎ声をあげ続けた。

「ああっ!はぁぁ、ああっ…」

より深い快感を得ようと、レイも自ら腰を上下に揺り動かす。下から突き上げてくるタイミングで腰を降ろすと、ズンという衝撃が体内の奥深くまで届き、更なる快楽を貪った。

「う…くっ…」

カイは低く呻きながら、何度も往きそうになるのを懸命に堪えていた。レイの蕾菊の感覚を一分一秒でも味わおうとするように耐えながら、レイの双臀を突き続ける。

レイが腰を降ろすタイミングで、レイの双臀を両手でしっかりと押さえ込み引き戻し、更に深く突き上げた。

「はぁぁっ、ああっ、ああ、ああッ…」

カイは机の脇に手を這わせ、隠されるように据え付けられた赤いスイッチを押した。

小さなモーターの駆動音が一瞬だけ響いたことに、行為に夢中になっていたレイは気付くこともなかった。

「見てみろ、レイ」

「んっ……?」

快楽に溺れ、辺りを見る余裕すらなかったレイが言われた方向を向くと、社長室と秘書室とを隔てていた筈の磨りガラスが、いつの間にか透き通り、室外の様子が丸見えになっていた。

「…い、いやだぁっ!」

透明になったガラスの向こう側では、昼休み時間ということもあり、秘書の男が一人残って机に向かっているだけであった。

「いやっ、はぁぁっ…ああッ!」

大きく下から突かれ、泣き叫びながら悶えるレイ。

その声が聞こえたのか、ふと、男が顔を上げ、レイと視線が合った…ような気がした。

「見っ、見ないでッ……いや、いやだぁッ!」

その刹那、レイの全身が硬い樫の棒のように突っ張ったかと思うと、全く手を触れていなかったレイの熱茎から白濁とした迸りが猛然と噴き出した。

「あ、あぁ……あぁぁ……」

秘所を突かれる度に身体が小刻みに震え、白濁液を辺りに撒き散らしてゆく。それらは机の上に置かれた書類や電話機にまで飛び散った。

「く、くッ……レイッ!」

急激に締め付けられ、カイも堪えられずに欲望を放った。

待ち望んでいたレイの体内に、熱い迸りが解き放たれる。

「あぁっ、ああ……」

カイの精を体内に感じ、荒い息をつきながら、ぐったりとした身体をカイに預けた。

互いの呼吸が元のペースに戻るまで、さほど時間はかからなかった。

「そんなに見られて興奮したのか」

「ちっ、違うッ!」

「見られたと思った時、感じたんだろう?ギュッと締めつけてきたぞ」

「そんな事言うなッ!馬鹿ッ!」

レイが視線を前に向けると、見られたと思った筈の秘書の男は、何事もなかったかのように机に向かい作業を続けていた。

疑問に思ったレイがカイに問いただすと、一言。

「マジックミラーを知っているか?それと似たようなものだ」

つまりは内側から外の様子は丸見えだけれど、外から中は覗くことができない仕組みであると。

「じ、じゃぁ、見られたと思ったのは…」

「普通に考えて、社長室が丸見えになるような事がある訳ないだろうが」

へなへなと力が抜けるレイを抱きかかえ、勝ち誇ったように口の端を上げて笑みを浮かべるカイの姿があった。



しかしそれから一週間後、“社長室に防音工事を施すついでに秘書課の改装を要求する稟議書”が秘書課連名で提出され、苦虫を噛み潰したような表情で渋々押印するカイの姿があったという。





社長室って防音されてるのか、未だに謎です。
 
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