ゲームセンターでの出来事

 此処は市街地からやや外れた所にあるゲームセンター。

 数日前、レイはタカオとマックスに「コンピューターゲーム」というものを教えてもらいました。

 白虎族の村にはなかった新鮮な遊びにすっかりハマってしまったレイは、時間があると町はずれで人のほとんど居ないゲームセンターへ遊びに行くようになりました。

レイ「うぅぅ〜!」(ガチャガチャ)

 闇雲にレバーを振り回しますが、そう簡単に言うことを聞いてくれる訳ではありません。

カイ「貴様……何をしている」
レイ「………………」

 そこへ噂を聞きつけたカイがやって来ました。
 …が、レイはゲームに夢中で気付きません。

カイ「おい、レイっ!」

 まさかレイに無視されるとは思ってもおらず、つい語調が強くなってしまいます。


レイ「あぁぁぁっ!」

 カイの声に気を取られたのか、ちゅどーん、という爆発音が響きわたりました。
 画面には「GAMEOVER」の文字が躍っています。

 呆然と画面を見つめていたレイでしたが、すっ、と右手がカイに向かって伸ばされました。

レイ「お金貸して」
カイ「はぁ?」

 予想だにしなかった言葉に、カイの口から間抜けな声が漏れました。

レイ「だってカイが急に声掛けてくるから負けちゃったじゃないか」
カイ「…それは俺のせいなのか?」
レイ「当然だろう」

 言い分には釈然としないものの、上目遣いで見上げてくるレイに、惚れた弱みかなどと思いながらカイはポケットの中に手を入れました。

レイ「ありがとう!」

 満面に笑みを浮かべ喜ぶレイの姿を見ながら、カイはなんとなく長期戦になりそうな気配を感じていました。
 それから十数分が経過しましたが、そう簡単に腕が上達する訳もなく。
 カイが渡した硬貨の枚数もかなりの数になっていました。

カイ「…もういい加減にしたらどうだ」
レイ「いやだ!あともう少しなのに」

 確かに最初よりは幾分マシになったようには見えるものの、このままでは1面をクリアするのに何時間かかるかわかったものではありません。

 渡した硬貨は順調に減っています。

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