ゲームセンターでの出来事(2)


レイ「あ、あの……」

 レイが再びおずおずと手を差し出しました。
 カイは残る小銭をポケットから取り出し、レイの掌へと渡します。

 さりげなく手を触るようにして。

カイ「……もう小銭が無い。両替してくる」
レイ「……すまない」

 両替機は店員が座るカウンターの脇にありました。その前に立ったカイがふとあたりを見渡すと、既に他の客は全員帰ってしまっていたようでした。
 しかも二人が陣取る席は奥まった所にあるため、カウンターからは死角になっていて見つかることはまずありません。
 思いがけず訪れた二人きりの時間に、カイは一人ほくそ笑みました。



 両替から戻ってきたカイは椅子を移動させると、レイの隣に腰を下ろします。

レイ「カイ!?」
カイ「…こちら側の方がよく見えるからな」

 とってつけたような理由だなと自分でも思いましたが、レイが何も言わなかったので、カイはそのまま座りながら画面を眺めていました。


 しかし、カイが隣に座ってからというもの、レイの操る機体の動きは明らかにおかしくなりました。

 カイに見られている事で緊張したのでしょうか。簡単なミスで機体を失うことが多くなり、硬貨の投入間隔が早くなってゆきます。

 そして、遂に。

レイ「なくなっちゃった……」

 レイは残念そうに呟きました。


 すると。

レイ「…カイ?」

 カイの腕がレイの首に廻されました。


 そのままぐい、と抱き寄せられてしまいます。

レイ「カイ?なにを……」
カイ「少し黙ってろ」



 抵抗する素振りを見せないレイに、カイの顔が至近距離まで近づいてきます。

カイ「レイ」
レイ「カ、カイ……」

 睫毛が見える距離にまで近付きました。カイの吐息が顔に当たります。
→次へ